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システムテストが間に合わないとき 優先順位を決める4つの基準

システムテストは、予定どおりに始まるとは限りません。 実装が後ろへずれ、環境準備にも時間がかかり、テスト開始時には残り日数だけが減っていることがよくあります。

このとき、全項目を同じ順番で消化すると、締め日までに重要な処理が残ります。 画面の文言確認を何件も終えたのに、受注登録から請求連携までの流れをまだ通していない、という状態は避けたいところです。

ここでは、受注管理システムの改修を例に、優先度表の作り方とリリース判断に残す情報を整理します。 対象は、項目追加や表示変更だけでなく、CSV連携や承認処理にも影響する改修です。

目次

残り時間とテスト対象の棚卸し

先に並べるのはテストケースではなく変更内容

テスト項目が多いと、一覧の上から順に消化したくなります。 ただ、並び順が作成順や担当者別のままだと、優先順位にはなりません。

最初に集めるのは、今回変えたものです。 画面、DB更新、帳票、CSV、外部連携、権限、バッチを1枚に並べます。修正した画面だけを見ていると、同じ登録処理を呼ぶ別画面や、夜間連携が後から残ります。

変更内容直接の対象周辺で確認するもの
受注入力に配送区分を追加受注入力画面、受注明細入力チェック、受注検索、CSV出力
承認画面に配送区分を表示承認詳細画面差戻し、再申請、承認履歴
出荷連携CSVに列を追加CSV出力処理出力件数、列順、空欄時の扱い、連携先取込

この棚卸しは、細かいテストケースを書く前に行います。 変更内容から周辺処理を辿る方が、優先順位を付けるための材料を集めやすいからです。

未実施を隠すとリリース判断が難しくなる

時間が足りない場面で、完了率だけを見ても判断しにくいです。 全体の90%が終わっていても、残り10%が請求確定や外部連携なら、安心できません。

逆に、残っているのが使用頻度の低い検索条件の組み合わせや、将来利用予定の帳票レイアウトだけなら、業務への影響は別です。 大事なのは、完了件数ではなく、何が未実施なのかを分けて見えるようにすることです。

tomo

テストの消化率だけを見ていると、残っている項目の重さが消えます。リリース直前ほど、件数より中身を見た方がよいです。

未実施項目を「時間不足」とだけ残すと、誰もリスクを判断できません 対象処理、未実施理由、想定影響、代替確認をセットで残します。

優先順位を決める4つの基準

基準1 変更が入った箇所

まず優先するのは、修正した箇所と、その修正が通る経路です。 受注入力に項目を追加したなら、登録だけでは足りません。修正登録、取消、承認、検索、CSV出力まで、追加した値が途中で欠けないかを見ます。

変更が小さく見えても、共通の更新処理を触っている場合があります。 たとえば配送区分を受注明細へ保存する処理を変えたなら、Web画面だけでなく、CSV取込やバッチ更新が同じ明細を更新していないか確認します。

変更箇所の確認では、画面単位で終わらせず、入力から後続処理までのデータの流れを1回通します。ここが通っていない状態で、周辺の軽い確認を増やしても優先順位としては弱いです。

基準2 業務への影響

次は、不具合が出たときに何が止まるかを見ます。 登録できない、承認できない、請求額がずれる、連携ファイルが受け取られない、といった処理は上位に置きます。

表示の余白や文言のずれも直すべきですが、受注確定後に金額を戻せない処理と同じ順番にはしません。 不具合の見た目ではなく、誤った結果がどこまで広がるかで判断します。

処理不具合が出た場合業務影響の目安
受注登録注文を受け付けられないA
承認後続の出荷指示に進めないA
出荷連携CSV連携先で取込エラーまたは誤出荷A
検索一覧の列幅閲覧しにくいが、処理は継続できるC

業務影響が大きい処理は、利用頻度が低くても後回しにしません 月末だけ使う請求確定や締め処理は、頻度が低いからといって軽く扱えません。

基準3 利用頻度

利用頻度は、同じ不具合が何人に何回当たるかを見るための基準です。 受注検索や受注登録のように毎日使う機能は、小さな操作ミスでも問い合わせが増えます。

一方で、管理者だけが年に数回使う設定画面は、同じ表示不具合でも影響範囲が狭いことがあります。 ここで見るのは、利用者数だけではありません。朝一番に必ず使うのか、締め日だけ使うのか、他の手段で回避できるのかも確認します。

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利用頻度は「毎日か月1回か」だけで決めません。締め日にしか使えない処理は、月1回でも確認を残します。

基準4 過去の障害と不具合履歴

過去に崩れた箇所は、今回の変更と直接関係が薄くても確認対象に残します。 特に、NULLの扱い、取消後の再登録、権限別の表示、CSVの列順は、修正量のわりに再発しやすい場所です。

テスト表に過去障害の列を作り、障害票や問い合わせ番号を残します。 理由が分かれば、「前回CSVの空欄で連携先が止まったため」のように、確認する根拠をチームへ説明できます。

過去障害の再確認は、念のための作業ではありません。再発したときに業務へ影響が出ると分かっている処理を、意識して残す作業です。

受注管理改修の優先度表

A B Cに分けるための記入例

ここでは、残り2営業日でテストを終える状況を想定します。 優先度は点数の合計だけで決めず、4基準の理由を書いたうえでA、B、Cに分けます。点数だけだと、なぜAにしたのかを後で説明しにくいからです。

テスト項目変更箇所業務影響利用頻度過去障害優先度
配送区分を指定して受注登録入力・保存を変更受注できないと受付停止毎日なしA
配送区分を変更して再承認承認画面を変更出荷指示が止まる毎日差戻し後の表示崩れありA
配送区分付きの出荷CSVを出力CSV列を追加連携先の取込に影響毎日空欄列で取込停止ありA
検索条件を残して一覧へ戻る画面表示を変更再検索が必要毎日なしB
一覧の列幅を調整する表示のみを変更操作は継続できる毎日なしC
旧年度の受注を検索する変更なし通常業務への影響は小さい月1回未満なしC

この表では、CSV出力をAにしています。 画面で配送区分が見えていても、連携ファイルに列が出ていなければ、業務全体としては完了していません。

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Aに入れる根拠を1行で書けると、テストの順番を相談しやすくなります。「重要だから」だけでは、途中で優先度がぶれます。

Aランクは業務の流れで通す

Aランクは、項目を単発で確認して終わりにしません。 配送区分を指定して受注登録し、承認し、出荷CSVを出力するところまで通します。途中で一度差戻し、値を修正して再承認する操作も入れます。

この順番にすると、画面ごとの単体確認では見えない受け渡し漏れが出ます。 入力画面では値が保存されているのに、承認画面で空欄になる。承認画面には出るのに、CSVには列がない。こうした不具合は、業務の流れで通して初めて見つかります。

Markdown
1. 配送区分を指定して受注を登録する
2. 受注詳細と検索一覧で配送区分を確認する
3. 承認者が内容を確認して承認する
4. 出荷連携CSVを出力し、列順と値を確認する
5. 差戻し後に配送区分を変更し、再承認する

この5操作が通ったあとで、Bランクの検索条件や表示確認へ進みます。 Aランクは、業務で値が渡っていく順番で確認すると、限られた時間でも検証の密度が上がります。

未実施項目とリリース可否

未実施の理由を表に残す

Cランクを後回しにした場合も、テスト項目を空欄のままにしません。 未実施理由と、業務上の影響を確認した人を残します。

未実施項目未実施理由想定影響代替確認判定者
一覧の列幅を最小画面幅で確認A、Bランクを優先したため横スクロールが増える可能性標準解像度での表示は確認済み開発責任者
旧年度受注の複合条件検索テストデータ準備に時間が必要過去データ検索時に絞り込み漏れの可能性単一条件検索は確認済み業務担当者

代替確認は、未実施を実施済みに見せるためのものではありません。 どこまで確認できていて、どこから先が未確認なのかを区切るための記録です。

未実施項目に「影響なし」と書く前に、誰のどの作業へ影響するかを確認します。根拠がないまま影響なしと決めると、リリース後の説明が苦しくなります。

リリース判断で見るべき状態

リリース可否は、テスト担当者だけで決めるものではありません。 少なくとも、Aランクの完了状況、未解決不具合、未実施項目、代替確認、業務側が受け入れるリスクを同じ表で確認します。

次の状態なら、リリースを止める判断が必要です。

状態判断の方向理由
Aランクが未実施リリース延期または対象機能を外す基幹の業務フローを確認できていない
Aランクでデータ不整合が残る原則として止める登録後の修正や復旧に影響する
B、Cランクのみ未実施リスクを記録して判断する業務影響と回避策を説明できる場合がある
未実施理由が不明判断を保留する影響範囲を説明できない

ここで重要なのは、BやCなら必ず出してよい、という意味ではないことです。 対象業務、リリース日、回避策の有無で判断は変わります。表には、判断に必要な事実を残します。

テスト表に残す判断記録

優先度だけでなく根拠を書く

テスト表の優先度列にA、B、Cだけを入れると、翌週には理由が消えます。 変更内容、業務影響、利用頻度、過去障害、未実施理由を列として残すと、次の改修でも使えます。

列名記入例後で役立つ場面
変更内容配送区分を受注明細へ保存影響調査と回帰確認
優先度の根拠毎日使う出荷連携に影響テスト順の合意
過去障害CSV空欄列で連携先取込停止再発確認
未実施理由旧年度データの準備待ちリリース後の追加確認
判定者業務担当、開発責任者リスク受容の確認

この表は、立派なテスト管理ツールを導入しないと作れないものではありません。 Excelやスプレッドシートで十分です。大事なのは、項目の完了・未完了だけでなく、順番を決めた理由を残すことです。

次の改修で使える形にする

今回Cにした項目は、ずっとCのままとは限りません。 次回の改修で検索条件や旧年度データに触れるなら、その項目はAやBへ上がります。

リリース後に問い合わせが出たら、該当するテスト項目へ障害番号と再発条件を追記します。 すると次回は、過去障害の基準から優先度を上げられます。

テスト表は、完了率を報告するためだけのものではありません。なぜその順番で確認し、何を残したかを次の改修へ渡す記録です。

残り時間が少ないときの進め方

変更内容からAランクを決める

テストが間に合わないとき、一覧の上から均等に進めると、最後に判断が必要な処理だけが残ります。 まず、変更内容を画面、データ、連携、権限、帳票に分けて並べます。そのうえで、業務を止める処理と、後続処理へ値を渡す処理をAランクにします。

受注登録、承認、請求確定、出荷連携のような処理は、画面単位ではなく業務の流れで確認します。 表示項目の確認を先に何十件終えても、Aランクが残っていればリリース判断の材料にはなりません。

Aランクを通したあとでBランクへ進む

Bランクは、日常的に使う検索や表示の確認です。 検索条件を保持できるか、一覧から詳細へ戻ったときの表示が崩れないか、権限ごとに余計な列が見えないかを確認します。

ただし、Aランクに不具合が残ったときは、Bランクの消化を優先しません。 登録したデータが連携先へ正しく渡るか、取消後に再登録できるかといった確認を先に終えます。ここは、見た目よりデータの整合性を優先する場面です。

Cランクは未実施理由と次の確認日を残す

Cランクを後回しにする場合は、対象を消さずに残します。 未実施の理由、想定される影響、代替として見た範囲、追加確認する日をテスト表へ記録します。リリース後に問い合わせが出れば、その項目を次回のAまたはBランクへ上げる判断材料になります。

たとえば旧年度データの複合検索を後回しにするなら、単一条件検索まで確認済みであること、旧年度データを使う担当者、次の月次確認日を残します。 これなら、未実施をなかったことにせず、誰がどのリスクを受け入れたかを後から追えます。

残り時間が少ないときほど、テストを減らした件数ではなく、Aランクをどこまで通し、未実施をどう残したかでリリースの説明が変わります。優先度表は、次回の改修でも使える判断記録になります。

参考になりますと幸いです。

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