会議後によくある「言った」「言ってない」の食い違い──。
現場ではよくある話ですが、放っておくと信頼関係やプロジェクト進行にじわじわ影響してきます。
私自身、プロジェクト管理やファシリテーションの中で何度もこうした“ズレ”に直面し、そのたびに対応に苦慮してきました。
そんな経験から、「記録の仕方ひとつで、ここまで変わるのか」と気づかされる場面もありました。
この記事では、実際に効果のあった議事録の工夫や、メンバーとの認識差を埋めるために取り入れてきた具体的な方法をご紹介します。
この記事を読むとわかること
- 「言った/言ってない」問題がなぜ起きるかの背景と対策
- 誰が読んでもわかりやすい議事録の書き方とテンプレート例
- 認識のズレを防ぐための配布と確認フローの工夫
「言った」「言ってない」のズレを防ぐ議事録の基本
議事録は、単なる記録ではなく、認識の共有と確認のための道具です。
しかし、現場ではその重要性が軽視されることも多く、特に忙しい会議では、要点が曖昧なまま話が進んでしまうことがあります。
その結果、「誰が」「何を」「いつまでにやるのか」が明確にならないまま会議が終わり、あとから「言った・言ってない」のズレが生まれてしまいます。
私自身も、話し合いのあとで「そんな話だったっけ?」と聞かれ、驚いた経験があります。そのとき感じたのは、記録の仕方以上に、“議事録の役割に対する認識のズレ”が問題を引き起こしているということでした。
そもそも何がズレの原因になるのか
話し合いの内容が食い違う背景には、情報の受け取り方の違いがあります。
口頭での合意は、その場の雰囲気や言い回しに左右されやすく、後から検証しようとしても「あれって結局、決まったんだっけ?」となることも。
たとえば、「〜の方向で検討しましょう」という表現が、Aさんにとっては「もう決まり」と受け取られ、Bさんには「まだ保留」と認識される──そんなズレが意外と多く起きます。
こうした微妙なニュアンスの違いは、後のトラブルや責任の押し付け合いにつながりかねません。
だからこそ、議事録には“言葉の温度”を落ち着いて記録する姿勢が求められます。主観を交えず、かつ合意事項は誰が読んでも同じように伝わるように明文化する – このバランスがズレを防ぐ第一歩です。
責任の所在があいまいになる怖さ
議事録があいまいだと、「誰が何をやるのか」がはっきりしないまま終わってしまうことがあります。
その結果、タスクが抜けたり、納期がずれたりといった、あとから効いてくる問題が起きがちです。
たとえば会議中、「じゃあ、よろしくお願いします」で終わった話が、あとから「自分がやると思ってなかった」と言われてしまう。こうしたちょっとしたズレが、あとになって責任の押し付け合いにつながることもあります。
だからこそ、議事録の中で「誰が」「何を」「いつまでに」を明確にしておくことが大事です。
書いてあるだけで、あとからの言い訳も防げるし、確認もしやすくなります。
曖昧さを残さないための議事録の書き方
会議中にメモを取ったはずなのに、後から見ても要点がつかめない。そんな議事録になってしまうこと、正直よくありました。
その場では書いてるつもりでも、あとから見ると要点がぼやけていて、何も伝わらない。でも、いくつか小さな工夫を取り入れたことで、驚くほどわかりやすくなりました。
まず意識したのは、「シンプルに書くこと」と「主語をはっきりさせること」。
誰が何を言ったか、何が決まったかがひと目でわかるようにする。読む人の負担を減らすためには、この2つだけでも大きな違いになります。
結論とToDoを先に書くシンプル設計
そのうえで、もうひとつ大きく変えたのが「構成の順番」です。どれだけ正しく書いてあっても、読まれなければ意味がありません。だからこそ、“最初に要点が見える”形に変えることにしました。
ダラダラした議事録は、誰も読みません。そこで私が試したのは、まず「決定事項」と「ToDo」を先に記載するスタイルです。
会議中でも、終了後すぐでも、要点だけ先に書き出してしまいます。こうすることで、読まれる議事録になります。
【決定事項】
・次回リリース日は6/15で確定(全員合意)
【ToDo】
・Aさん:仕様書の最終確認(5/25まで)
・Bさん:テストケースの準備(5/28まで)
余談ですが、結論が先にあることで、忙しい上司からの「で、何が決まったの?」攻撃も減りました。
誰が何を言ったかの明記ルール
こうした構成の工夫に加えて、もうひとつ大事なのが「発言の記録方法」です。議事録は構成だけでなく、どの情報をどの粒度で残すかでも伝わり方が変わってきます。
会議中、誰がどの意見を出したか。これが抜けてしまうと、あとで「それ俺言ってない」問題が起きやすくなります。
全発言を記録する必要はありませんが、「重要な発言」と「意思決定につながる発言」は、主語をつけて記録するようにしています。
【発言要約】
・Cさん:スケジュールは厳しいが、品質優先を希望
・Dさん:QAの準備期間を確保すれば対応可能と判断
・全体合意:品質優先、スケジュール微調整で進行
“誰がどう言ったか”を記録することで、話し合いの背景も残せるのがポイントです。
ただ、こうした記録を毎回バラバラの形式で書いてしまうと、読む側にとってもわかりづらくなります。
そこで、記録のルールや見せ方をある程度テンプレート化するようにしています。書き手が変わっても伝わる内容にするために、構成や見せ方をシンプルに整えています。
実際に役立ったテンプレートと記述例
テンプレートが決まっていると、書く人が変わっても議事録の品質はブレにくくなります。ここでは、私が実際に使っている構成とその狙いをご紹介します。
シンプルですが、「読み手がすぐ判断できること」を軸に設計しています。
決定事項と発言要約のセット書き
決定事項と発言の要約は、並べて書くと背景の理解がしやすくなります。特に合意形成のプロセスを示したいときに有効です。
【議題1】リリース日について
決定:6/15に確定(PM含め全員一致)
発言要約:
・Aさん:後工程を考慮すると余裕がある方が良い
・Bさん:テストの期間が心配なので前倒しは不可
・Cさん:日程に余裕を持つ方が安心して進められる
→以上を踏まえ、無理のないスケジュールで合意
背景を残すことで、過去の判断が振り返りやすくなります。
配布時のフォーマットにも一工夫
議事録を配る際、単にテキストで送るよりも、少しだけ装飾を加えることで読みやすさが変わります。
たとえば、箇条書き+太字や下線の使い分け。地味ですが、効果があります。
件名:【議事録】5/20 プロジェクト定例
■決定事項
・6/15リリースに向けて準備を進める(全員合意)
■ToDo
・Aさん:テスト仕様確認(5/25)
・Bさん:リリースフロー確認(5/27)
ちょっとした見た目の工夫が、「読む気」に直結するんですよね。
参加者との温度差を埋めるための工夫
議事録は、書いて終わりではありません。読まれてこそ意味があります。特に会議に出ていたけれどあまり発言しなかった人の“温度感”にどう寄せていくかも意識が必要です。
書く側の熱量と、読む側のテンションに差があると、議事録が“響かない”ものになってしまいます。
メール送付時に意識する一言
私は送付時、メールの冒頭にひと言だけ補足を入れるようにしています。内容は堅苦しくなくて構いません。
件名:5/20 定例の議事録です(決定事項:6/15リリース)
本文:
お疲れさまです。決定事項とToDoを先に記載しています。
確認のうえ、修正・補足あればご連絡ください。
こうした一言があるだけで、内容にすぐ目を通してもらえたり、返信や修正の反応が返ってきやすくなると感じています。
議事録確認のフローを仕組みにする
議事録を配っても、誰も見ていない──そんな状況も少なくありません。口頭で「送っておきました」と伝えても、忙しさの中で流されてしまうことがあります。
そこで、確認をちょっとした“仕組み”に落とし込むようにしました。
たとえば、Slackで「議事録確認OKならリアクションをお願いします」とだけ添えて投稿する。リアクションが返ってくれば確認済みがひと目でわかるし、未読の人にも声をかけやすくなります。
また、次回の会議冒頭に「前回の議事録で訂正あれば教えてください」と一言入れるだけでも、内容を見返すきっかけになります。
こうした小さな工夫の積み重ねで、確認の精度も徐々に上がっていきました。
まとめ:議事録は「記録」ではなく「合意の証拠」
議事録は、ただのメモではありません。合意の内容を明示し、後から誰が見ても同じ解釈ができる“証拠”としての意味があります。
実際、私の現場では議事録の書き方を見直してから、「言った/言ってない」の問題は激減しました。最初はやりすぎかと思った工夫も、今では自然な形で運用できています。
完璧な書き方はありませんが、少しずつでも“ズレを埋めるための道具”として議事録を育てていく。その視点があれば、無駄なすれ違いもきっと減っていくのでは、と思います。