この投稿は「Laravel Nova入門シリーズ」の第1回です。
Laravel Novaは、Laravel公式が提供する管理画面構築ツールです。本シリーズでは、Novaの特徴解説から実践的な導入手順、カスタマイズ方法までを段階的に解説していきます。
Laravelで社内ツールや業務システムを構築する際、「管理画面のUIを毎回ゼロから作るのは手間…」と感じたことはありませんか?
私もその一人で、繰り返しの実装に時間を取られていました。そんな中出会ったのが、Laravel公式の管理画面ツール「Laravel Nova」です。
最初は半信半疑でしたが、使ってみるとその開発効率に驚かされました。
本記事では、Laravel Novaの特徴やメリット・デメリット、実際に使って感じたポイントを整理しつつ、どんなプロジェクトに向いているかを実体験ベースで紹介していきます。
この記事を読むとわかること
- Laravel Novaで管理画面を高速に構築する方法とその仕組み
- 通常のLaravel開発とNovaを使った開発の工数比較
- Novaのメリット・デメリットと、導入に向いているプロジェクトの特徴
Laravel Novaとは
Laravel Novaは、Laravel公式が提供する有償の管理画面構築用パッケージです。
データベースに接続されたリソースを、最小限のコードで一覧・詳細・更新・作成といった操作に対応したUIに変換してくれます。
Laravelと高い親和性があり、学習コストを抑えながらも、本格的な管理画面を短期間で構築できる点が特徴です。
私が最初にLaravel Novaを使ったときは「設定ファイルを書くだけで、ここまでできるのか」と素直に驚きました。細かい調整はやや癖がありますが、業務でよくある“CRUDだけの管理画面”にはちょうどいい立ち位置のツールだと感じています。
有償ライセンスでの提供と価格
Laravel Novaは無料ではなく、商用利用を前提とした有償ライセンス制です。買い切り型ライセンスとして提供されており、以下のようなプランがあります(2025年6月時点):
- Singleライセンス:$99(1プロジェクト・個人開発向け)
- Unlimitedライセンス:$299(プロジェクト無制限・メールでのサポートあり)
商用開発や受託案件に使うならライセンス購入が必須です。
Laravelの公式パッケージという安心感もあり、有償とはいえ、開発効率や品質を考えるとコストパフォーマンスは十分高いと感じます。
Novaの利用にはライセンスキーが必要ですが、一度インストールされたあとは、localhost
や .test
ドメインなどの開発環境では、ライセンス認証はスキップされる設計になっています。
ただし、Novaの最初のインストール時(composerで取得する時点)には、必ずメールアドレスとライセンスキーによる認証が必要になります。
Laravel Novaの特徴
Laravel Novaの最大の特徴は、Eloquentモデルをベースに、管理画面用の「リソースクラス」を定義するだけで、基本的なUIを生成できる点です。通常のLaravelの知識があれば、学習コストはそれほど高くありません。
// リソースクラスのサンプル
namespace App\Nova;
use Illuminate\Support\Facades\Auth;
use Laravel\Nova\Fields\Color;
use Laravel\Nova\Fields\ID;
use Laravel\Nova\Fields\Text;
use Laravel\Nova\Http\Requests\NovaRequest;
class Status extends Resource
{
/**
* The model the resource corresponds to.
*
* @var class-string<\App\Models\Status>
*/
public static $model = \App\Models\Status::class;
/**
* The single value that should be used to represent the resource when being displayed.
*
* @var string
*/
public static $title = 'name';
/**
* The columns that should be searched.
*
* @var array
*/
public static $search = [
'id', 'name',
];
/**
* Get the fields displayed by the resource.
*
* @return array<int, \Laravel\Nova\Fields\Field>
*/
public function fields(NovaRequest $request): array
{
try {
return [
ID::make()->sortable(),
Text::make(__('Name'), 'name')
->rules('required', 'max:255')
->creationRules('unique:statuses,name,NULL,id,organization_id,' . Auth::user()->organization_id)
->updateRules('unique:statuses,name,{{resourceId}},id,organization_id,' . Auth::user()->organization_id),
Color::make(__("Color"), 'color')
->compact(),
];
} catch (\Throwable $e) {
throw new \Exception(__('System Error') . ' - ' . $e->getMessage());
}
}
一覧画面

登録画面

このように、モデルとの対応関係とフィールドを定義するだけで、一覧・登録・編集+削除などのUIが自動生成されます。

慣れてくると「とりあえずNovaで叩き台を作る」という運用も現実的だと思います。
通常のLaravel開発と比べて何が違う?
通常のLaravel開発では、管理画面を作るために(最低でも)ルーティング・コントローラー・ビューをそれぞれ設計・実装していきます。
自由度はありますが、繰り返しの作業も多く、UI部分は工数がかさみがちです。
一方Laravel Novaは、そういった冗長な構成を吸収してくれるイメージです。
コードの構造も「Nova用リソースに集約される」ため、保守性が高くなりやすいです。
ただし、自由なレイアウトや動的UIを求めると、Novaの仕組みだけでは限界も出てくるので、その点は見極めが必要なところです。
Laravel Novaが向いているプロジェクトの特徴
NovaはすべてのLaravelプロジェクトに最適というわけではありません。とはいえ、条件が合えば非常に有効な選択肢になります。特に“管理系の業務システム”との相性は良好です。
中小規模業務システムで使いやすい理由
Novaは、要件が「ある程度パターン化されたデータの管理」に寄っているシステムにとてもマッチします。
たとえば、以下のような業務系システムでは特に効果を発揮します:
- 顧客・案件・商品などの情報を一覧・登録・編集・削除したい
- ユーザーやスタッフが内部向けにデータを管理するダッシュボードが必要
- ログや申請履歴、問合せ履歴など、リードオンリーな一覧が複数存在する
- CSVエクスポートやフィルタリングといった典型的な“管理系操作”が中心
自分が扱った例でいうと、営業支援ツール(SFA)や社内勤怠システムのバックエンド管理画面などは、ほとんどNovaで完結できました。これらの画面は、UIの自由度よりも「とにかく早く」「正確に」「簡単に保守できる」ことが求められるため、Novaのような構成がフィットします。
// 営業案件管理画面用のNovaリソース例(色々端折ってますが)
class Deal extends Resource
{
public static $model = \App\Models\Deal::class;
public function fields(Request $request)
{
return [
ID::make()->sortable(),
Text::make('案件名'),
BelongsTo::make('顧客'),
Currency::make('見積金額'),
Select::make('ステータス')->options([
'open' => '進行中',
'won' => '受注',
'lost' => '失注',
]),
];
}
}
こうしたシンプルな構成で「案件一覧」「ステータス変更」「顧客との関連付け」などが実装でき、表示用のコードを書く必要がほとんどありません。
もちろん、もっと自由な操作が必要な場合は別の選択肢が必要になりますが、「社内用である程度UIが定型的でOK」という前提があるなら、Novaはとても頼りになります。
UIを自前で作る場合とのコスト比較
Laravel Novaを使う最大の利点の一つは、「自分でUIを一から作らなくていい」という点です。これは単なる便利機能というより、業務システム開発における“実際の作業時間”に直結する話です。特に管理画面の場合、画面の作り込みよりも、機能が整っているか、ちゃんと使えるかが優先されることが多いです。
一例として、社内向けの「顧客管理画面(一覧・登録・編集・削除・検索・CSV出力)」を作る場合を比較してみます。
作業項目 | 通常開発(Vue/Blade + Laravel) | Laravel Novaを使用 |
---|---|---|
モデル・マイグレーション | 0.5時間 | 0.5時間(同様) |
ルーティング・コントローラ作成 | 1〜1.5時間 | 不要(Novaが自動で処理) |
一覧表示(ページネーション付き) | 2時間 | 標準機能で即利用可能(0.1時間) |
詳細表示 | 0.5時間 | 自動生成(0時間) |
登録・編集フォーム設計+バリデーション | 2〜3時間 | fields() 定義のみ(0.5〜1時間) |
並び替え・検索フィルター | 1.5時間 | 標準機能で設定のみ(0.2時間) |
CSVエクスポート機能 | 2時間 | Action作成 or パッケージ(0.5時間) |
テスト・調整 | 1〜1.5時間 | 0.5〜1時間 |
合計工数 | 10〜12時間 | 2〜3時間 |
このように比較してみると、Laravel Novaを使った場合の工数の少なさは一目瞭然です。
特に一覧表示やバリデーション付きフォームといった毎回同じようなUI構成を作る場面では、Novaの恩恵が非常に大きいと感じます。
もちろん、全てのケースで「Novaを使えばいい」という話ではありません。細かいUI制御や独自設計が求められるプロジェクトであれば、自前実装のほうが適していることもあります。とはいえ、「社内ツール」「業務支援系」「短納期の試作」などでは、コスト対効果のバランスが圧倒的に高いのは間違いありません。
私自身、最初は「Laravelで管理画面くらい自分で作れるし」と思っていたのですが、Novaで試してみると「なんで最初からこれを使わなかったんだろう…」と感じたくらいです。
“画面を作る”のではなく、“機能を早く届ける”ことが目的なら、Laravel Novaはとても理にかなった選択肢になるのでは、と思います。
Laravel Novaのメリットとデメリット
Laravel Novaは便利なツールですが、導入すればすべてがうまくいくというわけではありません。
最初は「とにかく早く画面ができる!」と感動したものの、使い込むうちに「あれ?ここは思ったより融通がきかないな」と感じる場面もありました。
そこで以下に、Laravel Novaの代表的なメリット・デメリットを機能面・運用面の観点から整理してみました。
実際の開発で「どのくらい自由度があるのか」「どこで引っかかりやすいのか」を判断する材料として、参考になればと思います。
Laravel Nova のメリット
項目 | 詳細説明 |
---|---|
Laravelとの親和性 | Laravel公式が提供しており、Eloquentやポリシー、認可機能とシームレスに統合されているため、既存プロジェクトにも導入しやすい。 |
高速な管理画面構築 | モデルベースで画面を自動生成でき、最低限のコードでCRUD画面がすぐに完成する。PoCや業務ツール開発に非常に向いている。 |
リソースごとの構造が明確 | Novaでは各リソースが個別のクラスとして整理されるため、画面とロジックの関連が把握しやすく、保守性が高くなる。 |
柔軟なフィールド構成 | Text、Select、BelongsTo などのUIコンポーネントが豊富に揃っており、多くのユースケースに対してノーコードまたは少量のコードで対応可能。 |
フィルタ・検索・ソートが自動対応 | 一覧画面でのソート、フィルター、キーワード検索が自動的に利用可能になるため、ユーザー体験も向上。 |
標準のUIデザインが洗練されている | BootstrapやTailwindを使わなくても、初期状態で十分に美しい管理画面が構築できる。社内利用ではこのまま使えることも多い。 |
有料ライセンスによる品質保証 | 無料ライブラリと異なり、公式の保守と継続的なアップデートが期待できる。安定性・信頼性が高い。 |
Laravel Nova のデメリット
項目 | 詳細説明 |
---|---|
UIカスタマイズの自由度が低い | フィールドの並び順や表示・非表示の制御は可能だが、レイアウトやデザインの変更には制約がある。複雑なUIはVueコンポーネントの自作が必要。 |
複雑な業務ロジックには向かない | 条件分岐や複雑な関係モデルをまたいだバリデーション、トランザクション処理などは、Nova側で直接完結しにくい。結局は別途Laravelで制御する必要あり。 |
カスタム処理の書き方に癖がある | ActionやFilter、Lensesなど、Nova独自の設計思想があり、Laravel本体とはやや異なる。慣れるまでは手間取りやすい。 |
ドキュメントが簡略化されている | 公式ドキュメントは一通り揃っているものの、細かいユースケースやカスタマイズ事例は不足ぎみ。複雑な実装ではGitHub Issueやブログ検索が必要。 |
有料(ライセンス費用が必要) | 1ライセンス $99(サイト単位)から。個人開発や小規模プロジェクトではコスト負担に感じることも。 |
外部ライブラリとの連携制約 | 特定のJSライブラリや外部UIコンポーネントと競合する可能性がある。たとえばVue製のカレンダーやグラフとの統合はひと工夫必要な場合がある。 |
バージョン依存性が高い | Laravel本体とNovaの対応バージョンがシビアなため、Laravelをアップグレードする際にNovaも合わせて更新しなければならないことが多い。 |
Novaのメリットは、なんといっても“スピード感”です。
構築・保守・変更のいずれのフェーズにおいても、作業の効率が非常に高くなります。また、Laravel公式製という安心感もあり、サードパーティ製パッケージのような不安は少ないです。
デメリットは、UIの自由度はそれほど高くなく、コンポーネントの細かい挙動をカスタムしようとすると、それなりに工夫が必要になります。特に、複雑なUIやAjaxを多用した画面は不得意です。また、有料ライセンスという点も、プロジェクトによっては導入のハードルになるかもしれません。
使ってみて気づいた注意点
Novaは「とりあえず動くものを早く作れる」一方で、万能ではありません。特に、少し凝ったことをやろうとすると詰まる場面がいくつかあります。ここでは、実際に使って感じた“つまずきポイント”を挙げてみます。
細かいUI調整の自由度に限界あり
Novaはデフォルトで洗練されたUIを提供してくれますが、「このコンポーネントだけ並び順を変えたい」とか「一部だけ非表示にしたい」といった細かいニーズには弱いです。
カスタムフィールドの作成やVueコンポーネントの自作もできますが、正直そこまで手を出すなら、素直に自前開発を選んだ方が早い場面もありました。
Text::make('Name')
->hideFromIndex() // 一覧から非表示にする
->sortable(), // 並び替え可能にする
こういった設定である程度は対応できますが、それでも「完全に自由」というわけではない点に注意が必要です。
複雑なロジックはやはり別途実装が必要
たとえば、「特定の条件下でフィールドを変更不可にする」などの動的な振る舞いを実現しようとすると、Nova単体では力不足です。Novaの中でもある程度ロジックは書けますが、結局のところモデルやポリシー側で処理を書くことになります。
// ユーザーが 'update-email' 権限を持たない場合、Emailフィールドを読み取り専用にする
Text::make('Email')
->readonly(function () {
return auth()->user()->cannot('update-email');
});
このように条件付きでUIを制御することもできますが、複雑な条件が増えてくるとメンテナンスが大変になります。
そのため、「見せ方」はNova、「制御ロジック」はLaravel本体側と割り切って設計するのが良さそうです。
まとめ:Laravel Novaは管理画面開発の強力な選択肢
Laravel Novaは、手間のかかる管理画面開発を効率化する強力なツールです。
Eloquentとの連携やUIの自動生成機能により、工数を大幅に削減できます。特に、業務ツールや社内向けシステムではその効果が顕著です。
私自身も「もっと早く使えばよかった」と感じました。ただし、自由度が必要な場面では制限も多いため、要件に応じて取捨選択する視点が重要です。
これから試す方は、まずは小規模なプロジェクトで導入してみると、Novaの良さが実感できるはずです。
次回記事のご案内
Laravel Novaの基本的な特徴を理解したところで、次回は実際にNovaをインストールして動作させる手順に入ります。

